本来なら『調弦』の前にやるべきでした。
『糸』の掛け方は新しい糸に張り替える時や糸が切れた時に出来ないと話になりません。『調弦』や『サワリ』に深く影響してきます。
『駒』は竹などで作られた繊細な部品ですので壊さないように丁寧に扱うことが基本です。材質・形状・高さなど『駒』そのものの条件によって音質が大きく変わりますが、それ以上に『駒の位置』の影響は非常に大きなものがあります。
糸を掛ける
音緒に糸を掛ける
音緒に糸を掛ける方法は非常にシンプルで合理的です。慣れれば数秒で出来てしまいます。
- 音緒の輪に糸を通す
- 通した先の糸で輪を作る
- 作った輪を音緒の輪に被せる
- 糸を引っ張り締め付ける
たったこれだけです。最後の締め込みはしっかりしましょう。
『3の糸』は抜けやすいので糸の端を結んでおいたほうが良いでしょう。
さて、ここで問題が発生します。
音緒の輪の何処に掛ければよいのでしょうか?先端?中間?根元?
ネットで調べてみましたが、明確な答えは見つかりません。と言うか『人それぞれ』の様です。
先端や中間に掛けると左の様に『糸』は『革』に当たりません。
根元付近では『糸』は『革』に当たります。
前者は『音緒』自体が音に大きく影響する可能性が大きいです。『柔らかい音』の傾向になる筈です。欠点として考えられることは『音緒』自体の伸びが『調弦』に影響しやすいことでしょうか?
後者は『音緒』自体が音に大きく影響する可能性が少ないです。『キレのある音』の傾向になる筈です。欠点として考えられることは『糸』が接する『革』にキズが付くことです。これは『音緒駒』を使うことで回避できます。
『音緒駒』は『音がクリアになる。』『音がシャープになる。』などと言われていますが、一部『変わらない!』と効果を否定される方もいらっしゃいます。私は『一定の効果はある。』と思っていますが、それよりも『糸が革に当たっているか?否か?』の方が大きいので『革保護』目的と考えても良いのではないか?と思います。
ハード音緒
私は『ハード音緒』愛用者です。
通常の音緒使用時では『糸を革に当てる派』ですので、『音緒』の音への影響は少ないと考え、且つ、より『調弦の安定』と『シャープな音』を求めて『ハード音緒』に至っています。
『ハード音緒』の糸の掛け方は『クラシックギター(ガットギター)』と同じです。
糸の下に通す
『1の糸』は1~2回
『2の糸』は2~3回
『3の糸』は3~4回程度
通常の『音緒』の方が早く掛けられる事は間違い有りませんが、『調弦』まで含めて考えると『ハード音緒』の有効性は有ると思います。まぁ、最終的には『音の好み』で良いと思いますが…
ここで失敗談!
『ハード音緒』を『よりシャープに!』『より調弦安定』を求めて、『クラシックギター』で使われている『ストリングタイ』を使ってみました。(高いんですが…)
目的に対しての効果は『?』でしたが、折角買ったのでしばらくは使用していました。
が、問題発生!
先生との練習中『糸』が切れ『ストリングタイ』が何処かへ…
慌てながらも、その時は上記の掛け方で直ぐに対応しました。結局、効果も感じられないので使用するのをやめました。
糸巻きに糸を掛ける
基本的には
- 糸巻きの穴に糸を通す
- テンションを掛けながらキレイに巻いていく
だけのことです。ギターでもそうですが、糸を通した後、糸の止め方が色々あります。
要は『糸が抜けない事』『できるだけ調弦を安定させる事』が目的ですので、それプラス、『早さ』がクリアできればどの方法でも良いと思います。
ちなみに私は『1の糸』『2の糸』は先端を巻きつけ内に入れてしまい、『3の糸』は先端を結んだだけです。
『3の糸』は先端を丸結びする
ここでテンションが弱かったり、重なる様に巻いてしまうと
調弦が安定しない→糸巻きのところで伸びが発生する
ここで注意点
- 糸巻きを回す時は糸倉の壁面に親指または小指(内側の指)を掛けて糸巻きに対して押し込む力を入れながら回す。(カラ戻り防止)
- 『1の糸』『3の糸』は糸倉の壁面いっぱいまで巻いては駄目 (カラ戻り防止)
【豆知識】『3の糸』を『2の糸』側に寄せることで『3の糸』と棹端にスペースができ、『ハジキ』などがやりやすくなるかも!
糸巻きの順番
『津軽三味線』以外の三味線は糸巻きの順番は上から『123』の順番ですが、『津軽三味線』は流派によって『123』と『132』の2種類あります。
順番が違う理由は諸説有ってよくわかりません。
私が属する流派は『123』です。先生も特にうるさく言わない方ですので最初の1年半は『132』でやっていて、先生の舞台にご一緒させていただく時に『123』に直しました。
両方経験した結果感じたことは、『慣れ!』だけの問題にしか思えませんでした。
糸巻き順を変えるにあたって糸巻きの穴を変更する必要があります。
私が中古三味線、中古糸巻き、または同門の方々の三味線など触ってきて思ったこと。『糸巻きの穴位置が適当すぎ!』
上の図をよく見ていただくとわかるのですが、糸巻き順に関わらず、糸巻きの先端側(細い方)に穴をあける必要は無いのです。
ところが糸巻きの先端側(細い方)に穴が開いていることの多いこと!なにか理由有るのかなぁ?私にはわかりません。
ちなみに糸巻き構造上の太い側から細い側に巻いていくのが正しいと思います。その点から見ますと『132』が正しいことになります。(ただし、2の穴が先端側でなければです。)
シゴキ
これは『調弦安定』のために、『糸の伸び』を少なくする様に予め『伸ばす』ということと、『音緒』『糸巻き』の『締め込み』の行為です。
私自身、まだ出来ていませんので再び、米谷威久昭先生の記事を参照ください。
駒を掛ける
基本的に『駒は繊細な部品です』ので慎重に扱いましょう。
『駒を掛ける』『駒を外す』『駒を移動させる』時は『糸』を持ち上げて(できれば緩めた上で)『駒』を動かすって事です。
『革や糸の保護のため』使い終わったら『駒を外しておきましょう』
そして、『革』と『糸』の間に『桐胴板』などを挟んでおけば良いですね!
と言いながら私は『駒を外す』事すらやっていません。『駒』をテープ止めしちゃってますから…
駒の位置
前回の『ツボ(勘所)』で私が勝手に決めました。
『上駒から80cmの位置に駒を掛けてください。』
最初はコレでいいです。
『撥付』が安定してから『駒の位置』をズラして音の違いを楽しんでください。その頃には『ツボ』がズレても直ぐに対応できるはずです。
ちなみにザックリ言うと太鼓の中心に近づくほど『パワー系』、音緒に近づくほど『繊細系』ってイメージです。
私の先生は後者で『長唄三味線』などに近い位置です。
駒の種類や高さ
これも色々ありますが『【準備編】-4 必要なもの』で紹介しました↓
まずはコレからはじめませんか。材質、高さ、糸道幅など標準的で品質も安定しています。非常に良いと思います。
糸道の付け方
やってみれば簡単ですが、道具は必要です。
- 駒の中心にマジックなどで印を付ける
- 好みの間隔に印を付ける
- 印の部分を三角ヤスリで溝を作る
- 糸切れ防止仕上げ 古い糸などに擦ったり、細かいヤスリで仕上げたり
こんな感じですが、私はギター用の『ナットファイル』を使っています。(高価ですが元々ギターメンテ用に持っていましたので…)溝幅を糸に合わせられて、仕上がりが丸くなるので非常に良いと思います。
次回は本編最終回『文化譜の読み方』です。
コメント
糸巻きは、修理の際に穴の位置が変わったのだと思います。
小泉様
コメント頂きありがとうございます。
やっぱり、そんな感じですかね?
修理方法も色々あると思うので別な方法で修理すれば良いのに!って思ってしまうんですがねぇ…