『三味線』では『チューニング』のことを『調弦』と言います。そして、『三味線』独特の音は『サワリ』と言う『倍音発生機構』によって生み出されます。『津軽三味線』では『東さわり』と言う『サワリ調整機構』が付いています。まるでエレキギターの『オーバードライブ』や『ディストーション』の様です。
『三味線』の調弦
(以前の記事から引用)
『三味線』は『唄い手』さんのキーに合わせて調弦を変えます。また、曲によって大きく3種類の調弦があります。ここまで聞くと複雑に感じますが…
津軽三味線で最も多い『二上り』調弦は、『1の糸』(太い糸 ギターとは逆です。)を『C』(和楽では『2尺』または『4本』と言う。)にした場合、1の糸から『C』『G』『C』と合わせます。そうです。5度とオクターブのパワーコードです。馴染みやすいですね!
『本調子』と言われる調弦 『 二上り』が『本調子から2の糸を1音上げる』なので『2の糸』を1音下げます。『C』『F』『C』になります。
『三下り』 と言われる調弦は『本調子から3の糸を1音下げる』なので『C』『F』『B♭』になります。 気が付きましたか?そのまま、『E』までシフトすると『E』『A』『D』
そうですね!ギターの6/5/4弦または5/4/3弦と同じです。その理屈で見ると『本調子』は『6弦1音ドロップ』と同じです。身近に感じてきませんか?
ちなみに『2尺』とか言うのは『尺八』の長さ、『4本』と言うのは『篠笛』の長さで、それぞれ長さでキーが変わり、それらを基準に音を合わせます。
『基準音』について
普段『教室』などでの調弦は『先生に合わせる』が基本になりますのであまり気にしていないようです。
バンドなどやっているのであれば通常は『A=440Hz』でチューニングしていると思います。
『津軽三味線』は基本的には『民謡の伴奏』ですから他の楽器『尺八』などと合わせる必要があります。『尺八』は『A=442Hz』だそうです。米谷威久昭先生の記事参照
調弦してみる。
ひとりで調弦をする場合、『基準音』で『1の糸』を調弦したら、他の糸は耳で調弦しましょう。(まずは『東サワリ』は糸に触れない状態にしておきます。)
基本的に『1の糸』を鳴らしながら『2の糸』、『2の糸』を鳴らしながら『3の糸』と調弦するのですが最初は『1の糸』を鳴らしながら『3の糸』を調弦してみましょう。(あっ!『二上り』調弦です。)
『1の糸』に対して『3の糸』は1オクターブ上ですので『余韻のウネリが綺麗に重なります。』
次に『1の糸』を鳴らしながら『2の糸』を調弦します。『2の糸』は5度上の音ですので『ド・ソ』の聞き慣れた『パワーコード』になり、完全に調和の取れた和音になります。
『1の糸』から『3の糸』まで同時に鳴らしても『パワーコード』の完全に調和の取れた和音になるはずです。
耳で調弦できるまで、チューナーを使って確認しながら『耳を養ってください。』
ポイントは『余韻のウネリ』です。
『純正律』?
ここで気がついた方は『鋭い!』ですね。
『余韻のウネリ』でチューニングしていますので『純正律』であるハズなんです。ですからチューナーを使ってチューニングしてしまうと『2の糸』が合わないんです。(チューナは『平均律』)
実際に『チューナー』で『2の糸』を合わせる場合、『2セント高く』調弦する必要があります。
参考まで他の調弦では
『本調子』は『2の糸』を『2セント低く』
『三下り』は 『2の糸』は『本調子』と同じ。『3の糸』は 『18セントも高く』しなくてはなりません。(と、2時間前に勢いで書いたのですが、実際『三味線』触ってみて違う様なので訂正追記)『3の糸』は『2の糸』に対して4度上の音なのでチューナーに対しては『4セント低く』調弦する事になります。かな?(ちょっと自信ない。多分合ってる。)
『2セント』は半音に対して1/50の差とごく僅かですが、この違いが『響き』の違いであり、それを聞き分ける『耳』が人の能力なのです。
『チューナー』で調整しているのに先生から『2の糸が低い!』なんて言われていたら、こういうことなんですよ。『過信禁物』です。
バンドやセッションなどで他の楽器が『純正律』なのか?『平均律』なのか?知っておくことも『いつか役に立つ』かも知れません。
とは言っても、演奏中に狂ってきたら…
いずれにしても『耳』を鍛えましょう!
(2019/9/6追記)
参考までに音声ファイル(正弦波ですが)をUPします。
それぞれ単音で2秒づつで2音の後、2音ミックスです。
CとG(完全5度) 二上り(四本)調弦の1と2の糸
CとF(完全4度) 本調子、三下り(四本)調弦の1と2の糸
Fと♭B(完全4度) 三下り(四本)調弦の2と3の糸
わかるかなぁ?
サワリ
『サワリ』と呼ばれる機構は、ギターで言ったら『ビビリ音』なのですが、『1の糸』の1箇所にビビる箇所があり、倍音が発生、独特の『ビィーン』と言う音になります。『2の糸』『3の糸』は直接『ビビリ音』はありませんが『1の糸』が共振して倍音が聞こえます。
『1の糸』を鳴らながら『東さわりの調整ネジ』を回して『サワリが最大になる点』に調整するのですが、正しく調整され(二上りで)調弦も合っていれば 『2の糸』『3の糸』だけ鳴らしても綺麗に『サワリ』が付きます。
『三味線』の状態が正しく整備されていて『調弦』『サワリ』が完璧であれば、『三味線』にちょっと触っただけでも『サワリ』の音が聴こえるハズです。
『サワリ調整』のノウハウは神谷茂良先生のインタビューCD知ったので、ここでは言いません。
次回は『ツボ』についてです。
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